日本食品科学工学会誌
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低脂肪のプロセスチーズ物性に及ぼすホエイタンパク質濃縮物添加の影響
鈴木 学浅野 祐三藤田 治子井上 直幸阿部 忠博越智 浩小石原 洋岩附 慧二
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2012 年 59 巻 3 号 p. 122-126

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抄録

(1)クリープメータによる物性測定において,プロセスチーズは脂肪率を下げると最大荷重が大きくなる傾向が認められた.
(2)官能検査結果において,脂肪率が下がると「硬さ」と「弾力」は双方共に評価得点が大きくなった.一方,「口どけ」の評価得点は脂肪率と共に小さくなった.
(3)SEM画像結果において,プロセスチーズ表面の組織は脂肪率が下がると網目構造が緻密になる傾向が見られ,この組織の変化が硬さ等の食感に影響を与えている可能性が考えられた.
(4)WPC80または熱変性WPC80を脂肪率18% (w/w)の低脂肪プロセスチーズに添加すると,最大荷重が小さくなり脂肪率の高いチーズの物性に近づく傾向が見られた.
(5)WPC80または熱変性WPC80を添加した低脂肪プロセスチーズは,官能評価において未添加の低脂肪プロセスチーズよりも「軟らかい」,「弾力が弱い」,「口解けが良い」と評価され,脂肪率の高いプロセスチーズの食感に改善されていた.
(6)SEM観察から,熱変性WPC80は添加割合を大きくすると網目構造の目が粗くなり,脂肪率の高いプロセスチーズの組織に近づくことが示唆された.一方,WPC80は添加割合を大きくすると,網目構造の目は変化しないが網目を構成している骨格が細くなっていくことが示唆された.
(7)WPCには低脂肪プロセスチーズの食感を改善する効果があることが示唆された.また,WPCの添加によって低脂肪プロセスチーズの組織構造が変化し,その変化は添加するWPCの熱変性度によって異なる可能性が示唆された.

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© 2012 日本食品科学工学会
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