日本食品科学工学会誌
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高水分食品への応用を目指した米粉の分散性の評価と乳化能の検証
松宮 健太郎奥野 勇樹松村 康生
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2013 年 60 巻 11 号 p. 644-653

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抄録

米粉サスペンションに加熱処理とホモジナイズ処理を加えて分散安定性を調べた結果から,両方の処理を組み合わせることでサスペンションの分散安定性が向上することがわかった.そのメカニズムについて検討したところ,分散安定性の向上は主に澱粉の糊化と粒子の微細化によるものであることが明らかになった.また,米粉サスペンションに油脂を加えて調製したエマルションを解析した結果,改良の余地はあるものの,米粉を用いて比較的安定なエマルションを調製できることがわかった.エマルションの安定化には,主に澱粉とタンパク質が寄与していることが明らかになり,特にタンパク質では,プロラミンの寄与が大きいことが示された.
今後の方向性として,次のような可能性が考えられる.すなわち,代表的な食品エマルションであるマヨネーズやホイップクリームなどにおいては,通常水中に数μmレベルの油滴が分散した状態にある.本研究で調製した米粉サスペンション,特にホモジナイズ処理したものは数μmの粒子からなることから,米粉サスペンションの粒子の大きさを適切に制御できれば,米粉サスペンションを油脂代替物として利用できることが期待される.澱粉性食品素材は,α-アミラーゼの作用を受けることで口腔内において急速に分解し,油脂が口腔内で融解する際の挙動を擬態できるという報告もあり,この点においても米粉サスペンションは有用性が高いと考えられる.本研究で行った米粉サスペンションによるエマルションの調製に加え,乳化系への展開の軸になる可能性がある.

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© 2013 日本食品科学工学会
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