日本食品科学工学会誌
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近赤外分光法を用いたキタムラサキウニ生殖巣重量および生殖巣指数の非破壊評価
木村 優輝木宮 隆吉田 周平伊藤 瑞姫保科 由智恵西川 正純
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: NSKKK-D-23-00005

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抄録

食用ウニ類は外観から生殖巣重量や生殖巣指数を予測することが困難である.本研究では,青果物の内部品質の非破壊評価に広く用いられている透過方式の近赤外分光装置を用いて,キタムラサキウニ(Strongylocentrotus nudus)の生殖巣重量および生殖巣指数の評価手法の開発を試みた.試料は,2021年および2022年に宮城県石巻市または女川町で水揚げされたキタムラサキウニ216個体を用いた.得られた近赤外吸収スペクトルを主成分分析で解析したところ,2次微分処理を行ったスペクトルの第1主成分の寄与率は90 %であり,そのローディングベクトルでは,主に脂質の吸収帯である930 nm付近に負のピークが観察された.また,Partial Least Squares回帰分析を行った結果,2次微分スペクトルを用いた生殖巣重量の検量モデルの評価結果は,因子数4,相関係数0.78,標準誤差4.4 gであった.同様に生殖巣指数では,因子数4,相関係数0.76,標準誤差4.6 g/100 gであった.これらの結果から,生殖巣重量および生殖巣指数を非破壊・非接触的に評価できることが示唆され,これは生殖巣の脂質が検知されることによるものと考えられた.本手法を用いた非破壊評価システムの構築により,天然については身入りの良好な個体を出荷し,身入りの悪い個体は海に放流あるいは養殖に向ける等,新たな判断基準として活用することができる.

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