日本食品科学工学会誌
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α-リノレン酸高含有植物油は炒め調理に使用できるのか?
津留 真里絵野口 明日香渡辺 睦行
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論文ID: NSKKK-D-23-00013

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抄録

近年, n-3系多価不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA) の摂取不足が健康上の問題となっている. n-3 PUFAには, 魚由来のEPAやDHAと植物由来のα-リノレン酸が存在するが, 日本人の魚の摂取量は減少傾向にある. また, 欧米諸国には魚を摂取する習慣が少ない国も多いことから, α-リノレン酸高含有植物油の活用が期待されている. 植物油の一般的な摂取方法として, ドレッシングなどの生食による摂取と炒め調理などの加熱による摂取が挙げられるが, α-リノレン酸は酸化安定性が低いため加熱調理には不向きとされている. 一方で, α-リノレン酸高含有植物油の1つであるアマニ油を炒め調理に用いた研究によると, 短時間であれば喫食する際の油の劣化度や嗜好性に問題はないことが報告されているため, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に使用できる可能性がある. しかし現状では, α-リノレン酸高含有植物油の種類や炒める食材の違いによる油の劣化への影響の報告はなされていない. そこで本研究では, α-リノレン酸高含有植物油 (アマニ油, エゴマ油, グリーンナッツオイル) を用いて野菜 (もやし, にんじん, ピーマン) を炒め調理した時の油の劣化度 (過酸化物価) を測定し, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に用いる際の油および食材の適切な組み合わせを検討した. その結果, 190 ℃で3分の炒め調理であればα-リノレン酸高含有植物油を用いることが可能であると示された. さらに, 炒める食材量に対して25 %以上の短冊切りのにんじんを用いると酸化劣化が抑制されることが明らかとなった. 以上より, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に用いることによってn-3 PUFAの摂取量を安全かつ簡便に増加させ, n-3 PUFAの摂取不足の改善に寄与することが期待される.

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