日本食品科学工学会誌
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2型糖尿病モデルKK-Ayマウスの糖代謝及び脂質代謝に及ぼすトゲドコロとジオスゲニン摂取の影響
永田 純一古場 一哲前田 剛希
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: NSKKK-D-24-00005

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抄録

今回我々は,糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスに沖縄自然薯(トゲドコロ)と血糖値低下作用が知られているキクイモや沖縄で食用として用いられる里芋の一種であるタイモを含む食餌を5週間与えた時のトゲドコロの血糖および脂質代謝に及ぼす影響を比較検討した.またトゲドコロに含まれるジオスゲニンの影響を調べるため,ジオスゲニン量の異なる食餌を2週間与えた時の血糖および脂質代謝に及ぼす影響を調べた.その結果,キクイモの摂取は有意な血糖値の低下,盲腸重量の増加と肝臓脂質(TGおよびコレステロール)濃度の有意に低い値(p < 0.05)を示した.骨格筋においてグルコースの取り込みに関与する遺伝子(GLUT4)の発現量も他の群と比較して有意に高い発現量(p < 0.05)を示した.一方,トゲドコロの摂取は血中コレステロール濃度で有意に低い値(p < 0.05)を示した.血糖値や糖代謝に関連する遺伝子発現量にキクイモに見られる顕著な影響は認められなかった.キクイモには低分子水溶性食物繊維が最も多く含まれ,トゲドコロはキクイモの半分程度,タイモが最も少ない含量を示し,血糖値には水溶性食物繊維含量が反映したと考えられた.今回の実験では,トゲドコロ摂取は血糖値調節作用よりむしろジオスゲニンによる脂質代謝,特にコレステロール代謝に影響を及ぼす食餌因子としての可能性が示唆され,脂質濃度の調節作用に効果的な食材と考えられた.

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