日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
無機塩類を含む水で浸出した紅茶およびコーヒー液の水色について
早坂 明鈴木 久子永沢 信
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1964 年 11 巻 11 号 p. 479-483

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抄録

水道法による水質基準程度の濃度の無機塩類を含む水で紅茶やコーヒーを浸出したばあいに,浸出液の水色がどのように変化するかを見るために,もっとも光学濃度の高い波長部分で光学濃度の変化を測定した。
1) 紅茶,コーヒーとも一般にこの程度の無機塩類を含む水で浸出しても浸出液のpHはほとんど変動しないが,pHの高い水で紅茶を浸出すると浸出液のpHは対照にくらべてやや高い。したがって,HCO3-を含む天然水を加熱した湯で紅茶を浸出するようなばあい,pHが変動して風味をそこなうおそれがある。
2) 紅茶液の水色は,浸出後時間の経過とともに暗くなるが,この現象は浸出用水の水質とはほとんど無関係のようである。
3) 紅茶,コーヒーとも浸出用水に無機塩類を含んでいると,それが水質基準以内の量であっても水色になんらかの変化がみられる。とくにNaHCO3溶液では水色が著しく暗くなり,またpH 9.5の水でもかなり水色が暗くなる。この現象は浸出用水のpHの変動だけでなく,むしろHCO3-またはCO22-の存在によって生じるものと思われる。
4) Fe3+を含む水では水色が暗くなることは従来知られていたが,Mn2+を含む水で浸出したばあいの水色の変化も著しく,溶液の濃度を考慮すればMn2+の影響はきわめて大きいといえる。中性の水で浸出した浸出液にMn2+を添加したのではあまり変化はみられず,この変化は浸出する際におきるものとみられる。
5) 全般的にみて,紅茶およびコーヒーの浸出には脱塩水を使用することがのぞましい。

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