日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
貝類缶詰の緑変に関する研究
(第1報) 缶詰かきの緑色色素の分離と物理化学的性質
長田 博光大塚 滋志賀 岩雄
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1969 年 16 巻 5 号 p. 197-201

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抄録

(1) 缶詰かきの緑色色素が胆汁色素,クロロフィルあるいは銅とのキレート化合物のいずれに由来するかを知るために緑色色素を抽出分離し,2, 3の物理化学的性質を調べた。
(2) 緑色色素を塩酸アセトン混合溶液で抽出し,シリカゲルカラムクロマトグラフィー,ペーパークロマトグラフィーおよびSephadex LH-20によるゲル濾過にて分離精製した結果3成分に分けられた(それぞれ緑色色素1, 2および3と略称)。これら3つの色素はいずれも245, 415, 600および655mμに吸収極大を持っており,緑色色素1と2は油状,緑色色素3は粉末であり,ほぼ20:1:10の割合で得られた。
(3) 薄層クロマトグラフィーでは緑色色素1と2は同一のRf値を示すが,緑色色素3のRf値は前二者と全く異なる。
(4) 分子量は緑色色素1は約700で,緑色色素3は約1000であると推定される。
(5) 緑色色素はいずれも胆汁色素に対する反応およびニンヒドリン反応は陰性であり,螢光反応は陽性であった。溶剤に対する転溶性試験ではいずれの色素も水に不溶性であり,また緑色色素はエタノール,石油エーテルに不溶性であるが,他の有機溶剤にはいずれの色素も可溶性あるいはやや可溶性である。
(6) 赤外線吸収スペクトルあるいは他の物理化学的性質より缶詰かきの緑色色素はピリベルジンあるいは銅とのキレート化合物とは明らかに異なり,クロロフィルともやや異なっていることを認めた。

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