日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
電子線によるミカンの表面殺菌
第1報 緑カビに対する有効殺菌線量と果実の品質に及ぼす照射の影響
梅田 圭司川嶋 浩二佐藤 友太郎伊庭 慶昭西浦 昌男
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1969 年 16 巻 9 号 p. 397-404

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抄録

(1) 緑かびの胞子をミカンの果皮に接種して,5℃に貯蔵後,1MeVの電子線で処理すると,電子線照射前の貯蔵期間が長いほど殺菌効果は小さくなる。
(2) 電子線照射線量が高くなると,果皮の軟化,油胞陥没が起こり,これに伴い褐色の斑点が発生し果皮の褐変化が起きる。この油胞陥没から褐変までの現象は,収穫から照射処理までの経過時間が短いほど発生しやすい。
(3) 電子線照射による軟化→油胞陥没→褐変といった果皮の放射線障害は照射後の常温貯蔵によって促進され,3~5℃の低温貯蔵で抑制される。また電子線処理前のキュアリング(予措)は放射線障害の発生に抑制効果はない。
(4) ミカン果皮の表面殺菌に,0.5MeVの電子線は,1MeVの電子線と同様な殺菌効果を示し,0.5~1.0MeVのエネルギーでは差がなかった。1MeVの電子線と60C0のγ線を比較すると,殺菌効果は同程度であるが,γ線処理では50 Kradの低線量でオフフレーバーが発生し,電子線では250 Kradまで外観,食味なんら悪影響を与えない。
(5) 長期貯蔵後の電子線処理ミカンの成分と,未照射試料との間に差はなかった。また貯蔵後の官能検査では,照射処理によってフレーバーが劣化した例はなく,逆に100~300 Kradでは未照射区よりも高いスコアーを示した。

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