日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
アミノ酸の食品への応用に関する研究
(第1報)L-リジンによる古米臭の消去について
山本 淳木暮 正祐
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1969 年 16 巻 9 号 p. 414-419

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抄録

(1) 典型的な古米臭を有すると判定された新潟県産の古米に,各種のアミノ酸を添加して炊飯し,官能検査によって検した結果,L-リジン塩酸塩を添加したときにのみ,古米臭を消去する効果を認めることができた。
(2) このような効果を確かめるために,上述の古米に添加量を変え,また,現在市販の経路で入手可能な各種の米に対して,一定量のL-リジン塩酸塩を添加して炊飯し,官能検査により検した結果,使用する米の種類によって効果に差異はあるが,少なくとも異臭,異味を付与する逆の効果はまったく認めることはできなかった。
(3) このような,L-リジン塩酸塩による古米臭消去の機作を知るために,n-プロパナールの稀薄水溶液に,等モルのL-リジン塩酸塩,遊離L-リジン,DL-アラニン,L-オルニチン,L-アルギニンを添加して加熱し,直接G.C.で検した結果,n-プロパナールはL-リジンの位のε-アミノ基と反応し活性化されることを知った。
(4) また,このときL-リジン塩酸塩と炭酸カルシウムを共存させることによって,n-プロパナールが不揮発化されることを明らかにし,実際に炊飯するときの機作を推定できた。
(5) 揮発性脂肪酸として,n-プロピオン酸についても,同様にモデル系による検討の結果,揮発性脂肪酸はL-リジンとの弱い塩結合によって不揮発化されるものと考えられる。

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