日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
食用固形脂の結晶成長におよぼす乳化剤の影響
(第5報)蔗糖脂肪酸エステル添加の効果
新谷 勲丸山 武紀今村 正男岡田 正和松本 太郎
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1973 年 20 巻 5 号 p. 199-207

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抄録

硬化大豆油,硬化パーム核油,牛脂および硬化鯨油に親油性の2種の蔗糖脂肪酸エステル(SE-1, SE-2)を0.5~5%添加して30℃に放置し,上昇融点,S.F.I.,DSC, X線回折による多形の転移,ミクロ針入度による硬度および電子顕微鏡による結晶成長の観察を行なったFig. 18. Hardened whale oil added 5% SE-1.ところつぎのような結果を得た。
(1) 硬化大豆油,硬化パーム核油にSE-1を添加すると放置中の融点変化は少なくなるが,動物脂に添加すると著しく融点が上昇する。トリエステル含量の少ないSE-2はSE-1に比べてそのような傾向が少なかった。
(2) SE-1を添加した植物脂は,添加量の増すに従って放置中のS.F.I.の変化が少なくなり,融点と対応することができたが,動物脂は添加による影響がほとんどみられなかった。
(3) DSC測定結果,SE-1添加硬化大豆油は放置中の変化がみられなくなり,硬化パーム核油は添加量が多いほど高温側の融解ピークが小さくなり成長抑制効果が認められた。
動物脂は添加量が多くなると高温側にピークが観察された。
(4) X線回折の結果,SE-1を添加した硬化大豆油は転移が遅く,牛脂,硬化鯨油の場合は変化はほとんどみられないが,添加量の多いほどわずかではあるが促進する傾向がみられた。
Fig. 19. Hardened whale oil added 1% SE-2.
(5) ミクロ針入度による硬度測定結果は,SE-1を添加した植物脂は添加量に応じて柔かく,動物脂の場合は逆に硬くなる傾向を示し,融点測定結果と対応することができた。
(6) 電子顕微鏡による結晶表面観察結果,SE-1を添加した植物脂はほとんど結晶化していないが,SE-2を添加したものは小さい単結晶が観察された。
牛脂に添加した場合は,結晶成長が観察されず,融点測定結果と対応することができなかったが,これはそのものの影響かまたは他の原因によるものと思う。硬化鯨油の場合はやや結晶化の傾向がみられた。終りに分析に協力された東海大学前田宗厚君に深謝する。

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