日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
果実そ菜における含有脂質とその役割に関する研究
(第8報) トマト果実の追熟に伴う揮発成分の生成と脂質の関係について
南出 隆久緒方 邦安
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1975 年 22 巻 7 号 p. 343-348

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抄録

トマト果実の追熟に伴う二,三のアシル水解酵素(リパーゼ,フォスフォリパーゼ,ガラクトリパーゼ),UFAを酸化するリポキシゲーゼや分解により生成されるカルボニル化合物,揮発性低級脂肪酸の変化を調べ,揮発成分と脂質との関連性について追究した。
(1) トマト果実をmature green期で収穫し,追熟させるとlight pink期ごろから揮発成分が生成され,それに伴って揮発性カルボニル化合物が増加することがわかった。
(2) 脂溶性カルボニル,揮発性低級脂肪酸,TBA価も同様,追熟とともに増加するのに対し,果実中のC18:2,C18:3などの遊離脂肪酸は着色時にもっとも少なくなった。
(3) フォスフォリパーゼ,ガラクトリパーゼ,リポキシゲナーゼ活性は,果実が着色する時期でもっとも強く,その後追熟が進むに従い低下したが,リパーゼは追熟とともに増大する傾向にあった。
(4) これらのことから,トマト果実の追熟に伴い糖脂質,リン脂質に含まれているUFAは,着色する時期にガラクトリパーゼ,フォスフォリパーゼにより加水分解され遊離脂肪酸となり,さらにリポキシゲナーゼによって酸化され,それが分解し,揮発性低級脂肪酸やnhexanalなどのカルボニル化合物となってトマト果実の揮発成分の一部となることが指摘された。

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