日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
全卵液の滅菌方法の検討及び乳酸菌による滅菌全卵液の発酵について
片峯 伸一郎関本 邦敏持田 芳照志済 吉信古川 徳山中 良忠
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1977 年 24 巻 9 号 p. 472-478

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抄録
鶏糞で汚染させた全卵液の滅菌方法を検討した後,滅菌全卵液(SWE)中での10菌株の乳酸菌の増殖及び生酸性を調べ,さらに,ある1菌株の休止細胞を用いて発酵させた場合のSWEの成分変化,特に,風味に関係する酸について検討を加えた。
初期細菌数レベルが5.1×104/ml以下の全卵液は,58℃, 30分間の殺菌を2または3回行ない,殺菌間の卵液放置条件を37℃, 2または3時間とすることにより,完全な滅菌効果が認められた。
各乳酸菌のスターターをSWEに5%接種し培養した結果,増殖,酸生成が認められた菌は, L. acidophilus L54(L54), L. casei L14(L14), Str. faecalis F904(F904)及びF706(F706)であった。 L14及びF904は,グルコース,ラクトースあるいはシュークロースを1ないし3%添加することにより酸生成が促進され, L54及びF706は,グルコースあるいはラクトースの添加により促進された。
L54の休止細胞けん濁液を用いてSWEを発酵させた場合,不揮発性有機酸としては,主として乳酸が生成され,また,代謝中間体と考えられるピルビン酸が微量検出された。発酵16時間後にはSWE中のグルコースの約90%が消費され,生成乳酸は約200mg%に達した。揮発性脂肪酸としては酢酸が10時間以後,少量生成されたが,他の揮発性脂肪酸は72時間の発酵を通じて全く見出されなかった。
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