抄録
鶏糞で汚染させた全卵液の滅菌方法を検討した後,滅菌全卵液(SWE)中での10菌株の乳酸菌の増殖及び生酸性を調べ,さらに,ある1菌株の休止細胞を用いて発酵させた場合のSWEの成分変化,特に,風味に関係する酸について検討を加えた。
初期細菌数レベルが5.1×104/ml以下の全卵液は,58℃, 30分間の殺菌を2または3回行ない,殺菌間の卵液放置条件を37℃, 2または3時間とすることにより,完全な滅菌効果が認められた。
各乳酸菌のスターターをSWEに5%接種し培養した結果,増殖,酸生成が認められた菌は, L. acidophilus L54(L54), L. casei L14(L14), Str. faecalis F904(F904)及びF706(F706)であった。 L14及びF904は,グルコース,ラクトースあるいはシュークロースを1ないし3%添加することにより酸生成が促進され, L54及びF706は,グルコースあるいはラクトースの添加により促進された。
L54の休止細胞けん濁液を用いてSWEを発酵させた場合,不揮発性有機酸としては,主として乳酸が生成され,また,代謝中間体と考えられるピルビン酸が微量検出された。発酵16時間後にはSWE中のグルコースの約90%が消費され,生成乳酸は約200mg%に達した。揮発性脂肪酸としては酢酸が10時間以後,少量生成されたが,他の揮発性脂肪酸は72時間の発酵を通じて全く見出されなかった。