日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
Ca塩によるウメ漬のテクスチャー軟化阻止の影響について
金子 憲太郎黒坂 光江前田 安彦
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1983 年 30 巻 12 号 p. 675-680

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抄録

塩化カルシウムで処理したのちに塩蔵したウメ漬の硬度が保持される機構について検討した。
(1)塩化カルシウムで処理したウメ漬の硬度は高かった。
(2)ウメは塩蔵することによって塩酸可溶性ペクチン画分の減少と水溶性ペクチン画分の増加が急激に起こり,それに伴って軟化した。
(3)塩化カルシウムで処理したウメ漬は無処理のものにくらべて水溶性ペクチン画分が少なく,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン及び塩酸可溶性ペクチン画分が多かった。また,硬度も高かった。
(4)塩酸可溶性及びヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分が多く,水溶性ペクチン画分の少ないウメ漬ほどAIS中のカルシウムが多かった。また,塩蔵によってAIS中のナトリウム含量が増加した。
以上の結果,ウメは塩蔵することによって塩酸可溶性ペクチン画分から水溶性ペクチン画分への変化が起こり,それに伴って軟化の生ずることが明らかになった。そして,そのことはウメのペクチン質に塩化ナトリウムのナトリウムが結合したことや有機酸による加水分解などにより,ペクチン質の分子構造に変化が起こり,その結果,組織構造が崩壊し,軟化すると推察した。
また,カルシウム塩は塩酸可溶性ペクチン画分から水溶性ペクチン画分への変化の阻止と,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分の増加を引き起こしウメ漬の硬度を保持することが明らかになった。そして,このことはカルシウムがペクチン質の架橋結合を増強したため構造が安定化するためと考えた。

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