日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
柑橘内果皮利用によるパパインの固定化,ゲル化と酵素活性について
河邊 誠一郎宇佐美 昭次
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1983 年 30 巻 3 号 p. 140-144

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抄録

柑橘内果皮に含まれるペクチンを利用し,パパインの固定化と,その活性化について検討し,次の結果を得た。
(1) 柑橘内果皮をアルカリ処理して得られる低メトキシルペクチン質含有物懸濁水溶液に酵素パパインを混ぜ, 1M塩化カルシュウム溶液中に注入すると,容易にパパインを包括した固定化物を得ることができた。しかし,同時にゲル化剤Ca2+は,パパインの活性中心であるSH基とも結合し,活性を阻害した。
(2) 金属キレート剤EDTA・2Naを含む活性化剤により, Ca2+ゲル化固定化パパインの活性は,ほぼ回復するが,同時に担体のCa2+も除去され,担体の崩壊を引きおこした。
(3) あらかじめパパインの活性基をHg2+によって修飾した後,固定化を行なった。このCa2+ゲル化固定化マーキュリーパパインに対し, L-システイン単独使用により活性化したところ,完全に活性を回復すると共に,担体への影響は全くないまま, 25回以上の連続活性が可能となることが認められた。しかも,この固定化パパインの活性は,水溶液パパインに劣らない高い活性を示した。
(4) 担体としては,ペクチン質単独よりも,柑橘内皮に含まれるセルロースをそのまま含有させた担体の方が,優れた性質を示した。

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