日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
成熟中のモモ種子および核の脂質の変化
モモ種子の脂質に関する研究(第3報)
竹永 章生伊藤 真吾露木 英男
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1984 年 31 巻 4 号 p. 254-262

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抄録

未熟期と完熟期におけるモモ果実(倉方早生,大久保,山根)の種子および核から総脂質を抽出し,ケイ酸カラムクロマトグラフィー,薄層クロマトグラフィー,シンクログラフィー,ガスクロマトグラフィーを用いて,その脂質組成および脂肪酸組成を比較検討し,次のような結果を得た。
(1)総脂質含有率は,未熟期のモモ種子(含水率70.0~82.0%)で0.1~0.2%,完熟期の種子(含水率54.0~63.0%)で5.6~10.5%であった。一方,未熟期の核(62.0~85.0%)では0.1~0.3%,完熟期の核(33.0~43.0%)では約0.1%であった。
(2)種子の総脂質中の中性脂質区分含有量は,未熟期より完熟期で非常に多かった。一方,核では,中性脂質区分,糖脂質区分,リン脂質区分の各含有量は,完熟期より未熟期でやや多かった。
(3)中性脂質区分を構成する脂質として,両熟期の両部位とも,トリアシルグリセロール,ステロール,1,2-ジアシルグリセロール,1,3-ジアシルグリセロール,ステロールエステル,遊離脂肪酸,モノアシルグリセロール,炭化水素の8種の脂質が同定された。これらのうち,主成分は,種子ではトリアシルグリセロールであり,とくに完熟期で非常に高い含有率を示した。一方,核中の中性脂質区分の主成分は,ステロールであり,両熟期とも高い含有率であった。
(4)糖脂質区分を構成する脂質のうち,同定されたものは,両熟期の両部位とも,アシルステリルグルコシド,モノガラクトシルジグリセリド,ステリルグルコシド,セレブロシド,ジガラクトシルジグリセリドの5種であった。これらの脂質のうち,アシルステリルグルコシドの含有率が,両部位とも未熟期で非常に高かった。
(5)リン脂質区分を構成する脂質のうち,同定されたものは,両熟期とも,種子でホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルコリン,ホスファチジルセリンの3種であり,核では前記3種の脂質のほかに,ホスファチジルイノシトールが確認,同定された。これら各脂質含有率の熟期による大きな差異はみられなかった。
(6)総脂質,中性脂質区分,糖脂質区分およびリン脂質区分の脂肪酸組成の熟期による相違をみると,種子では,総脂質の18:1酸含有率とリン脂質区分の18:2酸含有率が完熟期に非常に高く,一方,核では,糖脂質区分の16:0酸含有率が未熟期に,同区分の18:3酸含有率が完熟期に高かった。

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