抄録
大豆タンパク質(SP)の乳化特性がミルクカゼイン(SC)の共存によってどのような影響をうけるかを中心に検討し,次の結果を得た。SPおよびSCが形成する乳化物の性状は著しく異なり,タンパク質濃度の増加とともに前者が固形化するのに対し,後者は流動性を失わなかった。加熱処理したSP溶液の粘性および乳化安定性はそれぞれ高い値を示したが,これらはSCの共存にようSC単独系の低いレベルまで激減した。SC単独系およびSP-SC混合系の粘性をデンプンの添加によってSPの水準まで増加させたところ,それらの乳化安定性はSPと同等の水準まで増加した。しかし,低濃度タンパク質溶液を用いた実験の結果などから,SCの共存によるSPの乳化安定性低下の原因には,連続相の粘度低下以外に,SPおよびSCの分子構造そのものに由来する因子が関与しているらしいことを考察した。