日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
寒天ゲルの粘弾性の温度依存性
名倉 秀子赤羽 ひろ中浜 信子
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1984 年 31 巻 5 号 p. 339-345

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抄録

濃度0.5~2.0g/100mlの寒天ゲルについて,5~60Cの温度範囲における粘弾性定数を動的および静的方法より求め,温度依存性,および静的粘弾性定数と動的粘弾性定数の対応について検討を行った。
1) 寒天ゲルの動的弾性率E'および動的損失E″は温度範囲10~60℃において,E'は30~40℃, E″は40-50℃に最大値を持つ凸型の曲線を示した。
2) 損失正接tanδはどの濃度の寒天ゲルについても,温度上昇にともなって単調に増加した。
3) E'およびE″の温度履歴曲線は,温度上昇時にはE'では30~40℃, E″は40~50℃に最大纏を持つ凸型曲線となった。温度下降時には,E', E″ともに昇温前の値に近づいた。
4) 寒天ゲルの測定温度を昇温,降温,再昇温することにより得られた温度履歴曲線は,昇温時と再昇温時の曲線がほぼ一致した。
5) 寒天ゲルのクリープ曲線から得られた4要素の静的粘弾性定数のフック部の弾性率EHは,温度範囲10℃から60℃において.30℃に最大値をもつゆるやかな凸型の曲線となった。
6) 静的粘弾性定数から変換式を用いて算出した動的粘弾性定数E'sおよびE″sは動的粘弾性率E'およびE″と類似の傾向を示し,一応の対応がとれた。
7) 5~30℃までの弾性率の増加の傾向は,寒天ゲルの弾性がエンドロビー的であることを示唆するものである。

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