日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
カビによる加水分解乳脂肪からのメチルケトン類の生産
生化学的手法によるフレーバー生産に関する研究(第3報)
蟹沢 恒好伊藤 秀一
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 31 巻 8 号 p. 477-482

詳細
抄録

(1) 培養液にエタノールを添加,蒸留し,留液をガスクロマトグラフにかけることよりなるメチルケトン類の簡便な分析定量法を確立した。
(2) 市販ブルーチーズよりPenicilliumに属する菌株を分離し,C. Cylindracea lipase処理した乳脂肪に作用させたところ,一様にメチルケトン様フレーバーを生成した。これら菌株の中より,有用株TK-2068を選定した。生成主要メチルケトンはC3, C5, C7, C9, C11, C13のn-2-アルカノンであった。
(3) 効率よくメチルケトン類を生成させるための,基質とTK-2068株の接触方法は,まず麦芽エキス,ホエーパウダーなどを主原料とする培地に菌糸,胞子をよく形成させたのち基質を添加接触させる方法であった。
(4) 天然の基質として,リパーゼ処理全乳粉末,クリーム,バターについて検討し,いずれからもメチルケトン類がよく生成されることが認められた。フレーバープロフィルは全乳からのものがよりブルーチーズ的であり,バターからのものはより純粋なメチルケトン混成物に近いフレーバーを与えていた。
(5) 極端に遊離脂肪酸プロフィルの異なるCalf pregastric esterase処理全乳粉末からも,C. cylindracea lipase処理品からのものとほとんど変らないメチルケトンプロフィルが生成された。ただし全体の生成量は小さかった。
(6) 合成脂肪酸混成物からもメチルケトン類は生成されたが,乳脂肪のリパーゼ処理物を基質とした場合に比べ,生成量は少なく,かつそのプロフィルにもかなりの差が見られた。

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
次の記事
feedback
Top