日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ブルーチーズより分離されたカビによるメチルケトン類の生産
生化学的手法によるフレーバー生産に関する研究(第4報)
蟹沢 恒好伊藤 秀一
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1984 年 31 巻 8 号 p. 483-487

詳細
抄録
ブルーチーズより分離選択したPenicillium sp. TK-2068株によるメチルケトン類生産の条件検討を行なった。
(1) 培養時間により個々のメチルケトンの消長には大きな差があった。C7, C9メチルケトンの生成速度は早く,菌体と基質を接触後,数時間で最高に達し,以後減少傾向を示した。C3, C11メチルケトンは生成速度は遅いが徐々に増加する傾向を示した。フレーバープロフィルとしては24時間付近が最もすぐれていた。
(2) C7, C9メチルケトンは実験範囲内では基質濃度が高くなるほど,高率で生成された。C11メチルケトンはある基質濃度以上ではほぼ一定した生成量を示した。
C3メチルケトンでは基質の種類により差があり,リパーゼ処理全乳粉末ではC11メチルケトンとほぼ同様の傾向を示したが,クリームとバターでは濃度に比例して生成量は増大し,最も生成量の高いメチルケトンとなった。(3) 高いメチルケトン生産性を与えるためには十分な酸素の供給が必要であった。
(4) ファーメンターでの液内培養によるメチルケトン類の生産では,空気の供給量と生成香気の飛散の関係が重要な検討点であった。最適通気量は毎分培地の約1/5容量付近にあった。
(5) 培養液より回収されたフレーバー成分は,食品添加物としての乳製品フレーバーの素材として,有効に利用できることが判明した。
著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top