日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
31 巻, 8 号
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  • 生化学的手法によるフレーバー生産に関する研究(第3報)
    蟹沢 恒好, 伊藤 秀一
    1984 年 31 巻 8 号 p. 477-482
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) 培養液にエタノールを添加,蒸留し,留液をガスクロマトグラフにかけることよりなるメチルケトン類の簡便な分析定量法を確立した。
    (2) 市販ブルーチーズよりPenicilliumに属する菌株を分離し,C. Cylindracea lipase処理した乳脂肪に作用させたところ,一様にメチルケトン様フレーバーを生成した。これら菌株の中より,有用株TK-2068を選定した。生成主要メチルケトンはC3, C5, C7, C9, C11, C13のn-2-アルカノンであった。
    (3) 効率よくメチルケトン類を生成させるための,基質とTK-2068株の接触方法は,まず麦芽エキス,ホエーパウダーなどを主原料とする培地に菌糸,胞子をよく形成させたのち基質を添加接触させる方法であった。
    (4) 天然の基質として,リパーゼ処理全乳粉末,クリーム,バターについて検討し,いずれからもメチルケトン類がよく生成されることが認められた。フレーバープロフィルは全乳からのものがよりブルーチーズ的であり,バターからのものはより純粋なメチルケトン混成物に近いフレーバーを与えていた。
    (5) 極端に遊離脂肪酸プロフィルの異なるCalf pregastric esterase処理全乳粉末からも,C. cylindracea lipase処理品からのものとほとんど変らないメチルケトンプロフィルが生成された。ただし全体の生成量は小さかった。
    (6) 合成脂肪酸混成物からもメチルケトン類は生成されたが,乳脂肪のリパーゼ処理物を基質とした場合に比べ,生成量は少なく,かつそのプロフィルにもかなりの差が見られた。
  • 生化学的手法によるフレーバー生産に関する研究(第4報)
    蟹沢 恒好, 伊藤 秀一
    1984 年 31 巻 8 号 p. 483-487
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ブルーチーズより分離選択したPenicillium sp. TK-2068株によるメチルケトン類生産の条件検討を行なった。
    (1) 培養時間により個々のメチルケトンの消長には大きな差があった。C7, C9メチルケトンの生成速度は早く,菌体と基質を接触後,数時間で最高に達し,以後減少傾向を示した。C3, C11メチルケトンは生成速度は遅いが徐々に増加する傾向を示した。フレーバープロフィルとしては24時間付近が最もすぐれていた。
    (2) C7, C9メチルケトンは実験範囲内では基質濃度が高くなるほど,高率で生成された。C11メチルケトンはある基質濃度以上ではほぼ一定した生成量を示した。
    C3メチルケトンでは基質の種類により差があり,リパーゼ処理全乳粉末ではC11メチルケトンとほぼ同様の傾向を示したが,クリームとバターでは濃度に比例して生成量は増大し,最も生成量の高いメチルケトンとなった。(3) 高いメチルケトン生産性を与えるためには十分な酸素の供給が必要であった。
    (4) ファーメンターでの液内培養によるメチルケトン類の生産では,空気の供給量と生成香気の飛散の関係が重要な検討点であった。最適通気量は毎分培地の約1/5容量付近にあった。
    (5) 培養液より回収されたフレーバー成分は,食品添加物としての乳製品フレーバーの素材として,有効に利用できることが判明した。
  • 金子 憲太郎, 佐藤 千寿子, 渡辺 光代, 前田 安彦
    1984 年 31 巻 8 号 p. 488-495
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    野菜類を塩漬けした時にみられるヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分から水溶性及び熱水可溶性ペクチン画分への変化1)は塩化ナトリウムが野菜類のペクチンに化学的作用を及ぼしたのではないかと考えたので次のような方法でそのことについて検討し,あわせてその機構を考察した。すなわち,野菜類のAISをセルロースチューブに充填してから塩化ナトリウム溶液に浸漬・脱塩後に水溶性,熱水可溶性,ヘキサメタリン酸可溶性及び塩酸可溶性ペクチン画分と無機金属元素含量を分析した。また,これらの水溶性及び熱水可溶性ペクチン画分中の無機金属元素含量についても比較した。さらに,熱水処理したAISの各ペクチン画分について塩化ナトリウム処理・無処理での差異についても検討した。
    (1) AIS中のペクチンは塩化ナトリウム溶液に浸漬・脱塩することによって,ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分が顕著に減少し,水溶性及び熱水溶性ペクチン画分が著しく増加した。
    (2) AIS中の無機金属元素は塩化ナトリウム溶液に浸漬・脱塩することによってNaが顕著に増加し,Ca,Mg, Kが著しく減少した。
    (3) 熱水処理したAISのヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分は塩化ナトリウム処理によって著しく減少した。
    (4) 塩化ナトリウム溶液に浸漬・脱塩したAISの水溶性及び熱水可溶性ペクチン画分中にはNaが顕著に増加し,Ca, Mg, Kが著しく減少した。以上の結果,前報1)で報告した野菜類を塩漬けしたときにみられるヘキサメタリン酸可溶性ペクチン画分から水溶性及び熱水可溶性ペクチン画分への変化は塩化ナトリウムのNaがペクチンの多価陽イオンとイオン交換することに起因すると考えた。
  • 丹羽 栄二, 中山 照雄, 浜田 巖
    1984 年 31 巻 8 号 p. 496-501
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    たん白の網状構造が細かく,均一に分散するという足の強いかまぼこの特徴自体が結合水を増加させる原因になり得るかどうかについて考察した。かまぼこの中に仮想上の直線を設定すると,それに沿ってイオン性アミノ酸残基が多数存在し,直線上に電位を生ずると思われる。ある電界電位以上にある領域で水が束縛を受けて結合水になるとすれば,アミノ酸残基が分散して存在する程,その領域が大きくなることが静電気学的に導びかれる。したがって,足の強いかまぼこの上記の特徴が結合水を増加させている可能性がある。
  • 新国 佐幸, 伊藤 寛, 田中 正志, 太田 輝夫
    1984 年 31 巻 8 号 p. 502-510
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    味噌熟成中における大豆蛋白質の分解過程を明らかにするため,味噌の熟成中の不溶性画分について,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法及び6M塩酸グアニジンによるゲル濾過法により検討した。SDS電気泳動では,仕込み後10日以内に大豆蛋白質由来のバンドの減少,消失が認められ,低分子の新しいバンド(分子量約1×104)が現われた。10日以後その泳動パターンは,ほとんど変化しなかった。6M塩酸グアニジンによるゲル濾過の結果も同様な傾向を示した。これらの結果より,大豆蛋白質は熟成初期に大部分が分解され,不溶性として味噌中に存在する蛋白質は,麹菌酵素によるそれ以上の分解を受けにくいことが判った。
  • マアジ脂質に関する研究(第5報)
    田代 勇生, 露木 英男
    1984 年 31 巻 8 号 p. 511-519
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    生鮮マアジとそれより調製した開き生干し(製造直後)の脂質の比較,ならびに,25℃, 8℃および-20℃に貯蔵した開き生干しの脂質の経時的な変化を調べ,貯蔵温度,貯蔵期間と脂質の変化との関連について,TLのAV, POV, COVおよび脂質組成,各脂質の脂肪酸組成などにより検討した。得られた結果を次に示す。
    (1) 製造直後の開き生干しの含水率は,生鮮マアジに比べると4.5%低かった。また,各温度に貯蔵した開き生干しの含水率は,どの温度のものも経時的に僅かに低下した。
    (2) 生鮮マアジと開き生干しのTLはNL区分とCL区分に分画し,さらにNL区分からTG, FFA, DG, ST, HC, SEおよびMGの7種の脂質が認められた。
    (3) 開き生干しのTL含有率は約6~7%で,数値にばらつきがみられたが,生鮮マアジの場合(7.9%)より低かった。これは,開き生干し製造中に,TLの一部,特にNL区分中のTGが洗浄水および浸漬用塩水中に流出したためと考えられる。
    (4) TL, NL区分およびCL区分を構成する脂肪酸は,生鮮マアジ,開き生干しとも約30種認められ,主要脂肪酸は22:6酸,16:0酸,18:1酸,20:5酸,18:0酸および16:1酸であった。
    (5) 製造直後の開き生干しのTL, NLおよびCL区分の脂肪酸組成を生鮮マアジの場合と比較すると,開き生干しでは18:1酸などモノエン酸含有率が生鮮魚に比べて低かった。
    (6) 貯蔵中における開き生干し脂質の変化をAV,POVおよびCOVでみると,AVは25℃と8℃貯蔵では経時的に上昇し,しかも25℃の方が著しかった。一方,-20℃貯蔵ではほとんど変化しなかった。なお,POVとCOVは,どの貯蔵温度においても不規則な増減をしたため,脂質変化の指標となり得なかった。
    (7) 貯蔵中における開き生干し中のTLの脂質組成をみると,経時的にCL区分が分解し,逆にFFAが増加した。そしてこの傾向は,貯蔵温度の高いほど顕著にみられ,-20℃ではほとんどみられなかった。
    (8) 貯蔵中における開き生干しのTLとNL区分の脂肪酸組成は,どの貯蔵温度の場合もほとんど変化がみられなかった。一方,CL区分の場合は,22:6酸含有率の経時的な低下がみられ,特に25℃貯蔵で顕著であった。しかし,-20℃では,このような変化はほとんどみられなかった。
    (9) 以上のように,開き生干しの脂質の貯蔵中における変化は,貯蔵温度の高いものほど大きかったが,-20℃貯蔵ではほとんど脂質の変化はみられなかった。
  • 久保田 紀久枝, 小林 誠子, 小林 彰夫
    1984 年 31 巻 8 号 p. 520-524
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) 市販の新漬け沢庵の揮発性成分を凍結蒸留法により分離し,GCおよびGC-MSにより分析した。
    (2) 揮発性成分として40種の化合物を同定し,そのうち32種は沢庵香気成分として初めて同定された。
    (3) 主要成分は,発酵臭を代表するエタノール,2-メチルプロパノールなどのアルコール類と2-メチルプロピルアセテートなどのエステル類であったが,微量成分として3種の含硫化合物,2-メチルチオエタノール,メチオノールおよびそのアセテートが同定された。
    (4) 上記含硫化合物をアルコール類やエステル類等の発酵臭に微量添加し沢庵香気への寄与を検討した結果,沢庵の特有香気に重要な役割を果たしていることが示された。
  • 低食塩化食品における腐敗微生物の抑制に関する研究(第1報)
    山本 泰, 東和 男, 好井 久雄
    1984 年 31 巻 8 号 p. 525-530
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    (1) 供試したすべての有機酸は塩酸を用いた場合よりも高いpHで細菌類の生育を阻止しており,pH以外の有機酸の持つ抗菌性が強く作用していることが明白であった。
    (2) 特に,揮発性低級脂肪酸であるプロピオン酸,酢酸,蟻酸は耐酸菌を除く他のすべての菌の生育をpH4.5以上で阻止し,比較的pHの高い条件下での抗菌作用が期待される。
    (3) 食品への利用を考慮したpH 5.0での抗菌力の比較試験では酢酸が最も強く,次にコハク酸と乳酸が強かったが,クエン酸,酒石酸,リンゴ酸は弱かった。この抗菌力の強さは非解離型分子の濃度比率とよく一致していた。
    (4) 酢酸はpH 5.0では0.5%の濃度で乳酸菌以外のすべての供試菌の生育を阻止した。
  • 低食塩化食品における腐敗微生物の抑制に関する研究(第2報)
    山本 泰, 東和 男, 好井 久雄
    1984 年 31 巻 8 号 p. 531-535
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    食品保存へのエタノール利用を目的として細菌類に対するエタノールの抗菌作用について検討し,次の結果を得た。
    (1) エタノールは細菌類の誘導期,対数期,定常期のいずれに対しても影響を及ぼすが,グラム陽性菌では誘導期が延長し,グラム陰性菌では対数期に生育速度が低下した菌株が多かった。
    (2) 細菌類はエタノール濃度の増加とともに対数的に生育が抑制されたが,一定のエタノール濃度に達すると更に急激な生育抑制が起り,完全生育阻止に至った。
    (3) エタノールのMICは,グラム陽性菌に対しては8~11%で,特に乳酸菌が高く,グラム陰性菌に対しては9%以下で,特に腸内細菌を含む通性嫌気性菌が低かった。
  • 塚田 直
    1984 年 31 巻 8 号 p. 536-545
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 野口 明徳
    1984 年 31 巻 8 号 p. 546-547
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 31 巻 8 号 p. A55-A64
    発行日: 1984/08/15
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
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