抄録
食品保存へのエタノール利用を目的として細菌類に対するエタノールの抗菌作用について検討し,次の結果を得た。
(1) エタノールは細菌類の誘導期,対数期,定常期のいずれに対しても影響を及ぼすが,グラム陽性菌では誘導期が延長し,グラム陰性菌では対数期に生育速度が低下した菌株が多かった。
(2) 細菌類はエタノール濃度の増加とともに対数的に生育が抑制されたが,一定のエタノール濃度に達すると更に急激な生育抑制が起り,完全生育阻止に至った。
(3) エタノールのMICは,グラム陽性菌に対しては8~11%で,特に乳酸菌が高く,グラム陰性菌に対しては9%以下で,特に腸内細菌を含む通性嫌気性菌が低かった。