日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
小麦カルボキシペプチダーゼによる魚肉蛋白濃縮物からの苦味ペプチドの脱苦味機構
梅津 博紀一島 英治
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1985 年 32 巻 4 号 p. 281-287

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抄録

魚肉蛋白濃縮物のペプシン分解物から得られた苦味ペプチド画分に小麦カルボキシペプチダーゼを作用させると,アミノ酸の遊離とともに苦味が消失した。SephadexG-15によるゲルロ過分析の結果,小麦カルボキシペプチダーゼによる苦味ペプチド分解画分は,高分子画分,ジペプチド画分と遊離アミノ酸の3つの画分に分画された。ジペプチド画分におけるアミノ酸組成をみると全体のアミノ酸の50%をグルタミン酸とアスパラギン酸が占めていた。アミノ酸の遊離率が全体として38%のとき,アミノ酸の疎水度を示すΔf値(cal/mol)が1600以上の疎水性の高いアミノ酸の遊離率はプロリンを除いて40~84%と高かった。一方Δf値が1600以下のアミノ酸の遊離率は低い傾向にあった。以上より小麦カルボキシペプチダーゼは疎水性の高いアミノ酸を選択的に遊離させることと,それによって生成する酸性ジペプチドのマスキング効果との相乗作用により苦味を消失させるものと推論された。

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