1986 年 33 巻 4 号 p. 256-262
豚骨脂あるいはグルコースを唯一の炭素源とする培地でCandida lipolyticaを培養した.
グルコース培地での培養に比べて,骨脂培地のほうが菌体収量が明らかに多く,菌体の脂質含量も骨脂培地での培養は,グルコース培地での培養によるよりも多かった.菌体総脂質中の中性脂質含量は,両基質でほぼ同じであったが,骨脂培地での菌体はグルコース培地のものよりも,リン脂質が多く,糖脂質は少なかった.
骨脂培地で酵母を培養した後の基質から抽出した脂質は,かなりの量の遊離脂肪酸と少量のジアシルグリセロールおよびモノアシルグリセロールを含んでいた.このことから酵母は,トリアシルグリセロールを加水分解して生長し,加水分解で生じた脂肪酸を菌体に取り込んで菌体脂質の構成に利用していると認められた.
酵母菌体の中性脂質は,大部分トリアシルグリセロールと遊離脂肪酸より成り,それにジアシルグリロールと少量のモノアシルグリセロールおよびステロールエステルを含んでいた.酵母の極性脂質の主な成分は,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルコリン,ホスファチジルセリン,セラマイドモノヘキソサイド,セラマイドジヘキソサイドであった.
これら酵母菌体の脂質成分の脂肪酸組成を,骨脂およびグルコース培地で培養したC. lipolyticaの菌体脂質について比較検討を行った.