日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
大豆および大豆加工食品中における食物繊維について
竹山 恵美子福島 正子川原田 璋岡本 奨
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1986 年 33 巻 4 号 p. 263-269

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抄録

大豆およびその加工品としてきな粉,納豆,味噌,おからについてVAN SOESTのdetergent fiber法を用いて食物繊維の分析を行い,セルロース,ヘミセルロース,リグニン量を求め,さらにペクチン,粗繊維を定量し,加工によりどのような影響を受けるか比較検討した.その結果味噌や納豆の発酵食品ではヘミセルロース,ペクチン等の減少が認められた.また,きな粉については加工中の加熱によりNDF値が著しく高くなることがわかった.一方おからでは食物繊維各成分および粗繊維が豊富に含まれており,食物繊維の素材として有用であると考えられる.
次にきな粉のNDF値の異常に関連し,大豆の乾熱処理による影響を調べたところ,大豆は乾熱処理によってNDF以外の不溶性成分を生成し,それがNDF区分として分画されることがわかった.
さらにこのNDF区分をケルダール法により定量したところ,乾熱の影響の大きいものほど窒素含量が多く,またペクチン含量もやや増加することがわかった.一方,脂肪の関与は見られなかった.
Perkin Elmerの示差走査熱量計で大豆の乾熱処理の影響を調べたところ,脂肪による影響はほとんどみられず,水に不溶性の部分はその影響をほとんど受けないのに対し,水溶性の部分は乾熱の影響を受けやすいことがわかった.
これらのことから,タンパク質成分を主とし,ペクチン等を含む水溶性成分が,乾熱の影響を受けて不溶化し,NDF区分に混入分画されたことを明らかにした.
一方,これらの不溶性含窒素成分をタンパク質分解酵素で分解したところ,ほとんど消化された.この部分は食物繊維定量時に除去を要するので,試みにNDF定量以前に酵素処理を行ったところ,その結果にかなりの改良が見られた.
したがって,大豆の乾熱加工品“きな粉”においては,VAN SOESTのdetergent fiber法をそのまま適用しても真のNDFを定量することは困難であり,タンパク質分解酵素を用いる等の改良が必要である.

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