1989 年 36 巻 2 号 p. 127-131
ユズ果汁における褐変とフルフラール(FUR)および5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)との関連性について検討した.アスコルビン酸(AA)とFURについてきわめて高い相関(r=0.9995)があり,その直線式はほぼ原点を通ることからFURはAAの非酸化的分解により生成されることが明らかとなった.また,AAと褐変度との回帰式からAA以外の褐変発現因子もわずかながら存在することが示された.果汁系およびAAモデル系の実験結果からFURおよびHMFは褐変の要因とはならないこと,そしてデヒドロアスコルビン酸(DHA)から著しい褐変を生じることが示された.したがって,ユズ果汁において, AAからFURの生成が行われる一方, DHAを経る経路が同時に進行し,褐変には後者の経路が主に関与していることが示唆された.