日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
ソバを麹として用いた味噌の製造
外山 大介川原 一仁山下 實西山 和夫水光 正仁三浦 道雄
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1993 年 40 巻 10 号 p. 713-719

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抄録

ソバの新しい利用法に着目して,試験の原料にソバ,対照の原料に米,大麦を用いてそれぞれ麹を造り,各酵素活性を測定し,ソバが麹原料として適しているか検討した.次に各麹を用いて仕込んだ味噌について成分分析及び官能検査を行いソバ味噌の特徴を検討した.
(1) ソバ麹のα-アミラーゼ及びグルコアミラーゼ活性は他の麹と比較して若干低い値であったが,味噌醸造には十分なものが得られた.
(2) ソバ麹の酸性プロテアーゼは,他の麹よりやや高い活性が得られた.一方,中性及びアルカリ性プロテアーゼにおいては,ソバ麹はその他の麹と比較して数倍の活性が得られた.すなわち,原料のC/N比が低いと,中性及びアルカリ性プロテアーゼ活性が高くなるというこれまでの報告を確認できた.
(3) 味噌の熟成度の指標であるタンパク質溶解率及び分解率,酸度I及びIIは,ソバ味噌が他の味噌より高い値を示した.
(4) 遊離アミノ酸含量もソバ味噌が他の味噌より高い値であった.
(5) ソバが有するルチンは,味噌の醸造過程で分解するようであったが,熟成30日目の味噌においても残存することを確認した.
(6) 官能検査を行ったところ,ソバ味噌は色について評価が低かったものの,味,香り,組成では他の味噌に比べ遜色がなく,むしろ良い評価を受けた.また,ソバ味噌にはソバそのものの香りがあった.

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© 社団法人 日本食品科学工学会
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