1993 年 40 巻 10 号 p. 743-746
大根の辛味成分, 4-メチルチオ-3-ブテニル芥子油(MTBI)の安定性をpH6.5のMcIlvaine緩衝液中,37℃で振とう処理,超音波処理及び37℃の寒天培地での静置条件下で比較した.その結果,トランス体はきわめて不安定で,振とうまたは超音波処理で3時間以内に大半が分解したのに対し,シス体は3-5時間後でも30-50%が残存した.トランス体は寒天培地上でも6時間で96%が分解した.この結果に基づき, MTBI (2.5-7.5μmoi)の抗菌活性を培地と直接接触させることなく, 8種の細菌, 3種の酵母菌, 5種の糸状菌を用いてディスク拡散法により検討した結果, MTBIは特に糸状菌に対して強い生育阻害作用を示したほか,細菌ではグラム陽性菌に対する抗菌性が認められた.シャーレ内に拡散するMTBI濃度をGC分析したところ,最大でも添加量のわずか0.2%が気相中に検出されたことからMTBIの抗菌性はきわめて強力であると考えられた.