焼酎蒸留廃液のメタン発酵では,廃液のC/N比が低いために,発酵阻害を引き起こすNH4+が生成・蓄積される.そこで発酵槽内に蓄積するNH4+を希釈・排出するとともに,高濃度の菌体を滞留させる.とのできる膜分離メタン発酵槽を試作して,処理実験を行った.限外ろ過(UF)膜分離装置による菌体の分離・返送が良好に行われた結果,菌体濃度は16g-VSS/lにまで高められ,メタン発酵は良好に進行した.しかし, UFの膜面洗浄操作によって菌体濃度が減少すると,メタン発酵機能は,有機酸の蓄積により低下した.一方, NH4+の生成速度に基づいて水希釈を行った原料の投入によって,発酵槽内のNH4+濃度は設定値の2000 mg/lに維持され,発酵阻害は認められなかった.本実験から,ガス収率・発生速度を最大にする有機物負荷の設計値は, 4.78~8.00kg-VS/m3・dの範囲の中から選択できること,また有機酸除去率を最大にする有機物負荷の設計値は, 2.48~4.78kg-VS/m3・dの範囲の中から設定できることが示された.