日本食品科学工学会誌
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酢酸発酵のアントシアニン色素安定性に及ぼす影響
津久井 亜紀夫鈴木 敦子椎名 隆次郎林 一也
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2000 年 47 巻 4 号 p. 311-316

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抄録

酢酸発酵過程中の各種アントシアニン色素の変化と安定性について検討し,以下の結果が得られた.
(1) 発酵前のエチルアルコール量は6%であった.酢酸発酵が進んでくるとエチルアルコール量は減少し酢酸量が増加した.発酵21日後の酢酸量は5.0∼5.5%であり,pHは平均2.27であった.
(2) 褐変度は酢酸発酵中僅かに減少するが,大きな変化は認められなかった.
(3) 酢酸量の増加に伴いアントシアニンの吸光度は増加し,21日目で最高に達した.その時の各種ANの増加率はいちごANが約5倍,シソANが3倍,さつまいもANが約2倍,エルダーベリーANとブドウ果汁ANが約1.5倍となった.その後日数の経過に伴い減少傾向を示した.
(4) 発酵前の色調に比べて,発酵21日後a値,b値がブドウAN以外正に移行した.また明度と彩度の関係から発酵21日目までの色調変化はうすい赤色から濃い赤色へと変化した.発酵60日目ではくすんだ赤色になった.
(5) 主要ANの構造はLC/MSの色素成分分子イオンの質量数,フラグメントイオンの解析およびHPLCの相対保持時間により,エルダーベリーはEL1,ブドウ果汁はGR1,いちごはST1と推定した.
(6) 酢酸発酵21日後のAN相対的残存率はシソのPE1 56%,PE2 17%が最も不安定であった.エルダーベリー,ブドウ,いちご中の主要ANの相対的残存率は64∼72%であった.さつまいもANのSP1とSP4は有機酸が1個結合したアシル化ANである.それに比べ,他のAN(SP2,SP3,SP5,SP6,SP7,SP8)はコーヒー酸以外p-オキシ安息香酸,コーヒー酸,フェルラ酸のアシル化酸が1個多く結合したアシル化ANであり安定であった.

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