2026 年 2 巻 1 号 p. 343-347
[背景]亜鉛⽋乏症と味覚障害については広く知られるところではあるが、実際の臨床現場では⾒過ごされていることが多い。
[症例]84 歳、⼥性。アルツハイマー型認知症に被毒妄想とそれに伴う拒⾷、拒薬を認め⼊院治療を⾏った。⼊院中の本⼈の嗜好から味覚障害を疑い⾎清亜鉛を測定したところ40μg/dL と著明な低下を認めた。硫酸亜鉛の内服を併⽤することにより被毒妄想は消失し、精神症状も改善し向精神薬の減量も⾏うことができた。
[結論]認知症疾患において拒⾷、拒薬や被毒妄想などの症状はBPSD と判断され向精神薬による薬物療法を⾏われることが多い。しかしその背景には栄養学的な異常が存在している可能性もあり、今回は亜鉛⽋乏症からの味覚障害が毒という表現をもって妄想という形で出現しており、拒⾷にもつながっていた。⾼齢者は基礎疾患も多く常に栄養学的視点をもって診察にあたることが重要と考えられる。