2021 年 53 巻 5 号 p. 382-386
出生前診断によって胎児に先天性異常が指摘された場合, 妊娠の継続をめぐり, 「胎児の生命」 と 「女性の出産に関する自己決定」 という2つの価値が両立せずに衝突する可能性が示唆される.
本稿では先ず, 「胎児の生命の保護」 を法益として定めている刑法と, 人工妊娠中絶の根拠となる母体保護法および旧優生保護法について確認を行う.
また, 出生前診断について医療側に過失があり, 結果的に障害を有する児が生まれたケースにおいて, 裁判所がどのように患者側の損害や因果関係の認定を行ったのかという視角から, 出生前診断が 「胎児の生命」 や 「出産に関する自己決定」 に及ぼす影響や意味について検討を行う.