オレオサイエンス
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総合論文
酸化ストレスと脂質シグナリング
PLDを中心に
野澤 義則
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2001 年 1 巻 11 号 p. 1083-1090,1048

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抄録
生体酸素なしでは存在できない好気的生物は,それをエネルギー産生に利用する一方で,反応性の強い活性酸素分子種(reactive oxygen species, ROS)の産生を余儀なくされる。そして,酸素代謝で生じるROSが核酸をはじめタンパク質,脂質および糖質などの細胞成分に有害反応を惹起し,その程度によっては細胞死(ネクローシス,アポトーシス)をもたらす。したがって,これらの生物はROSによる有害反応に対して抗酸化的防御機構を獲得してきた。防御酵素系の主なものにスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)およびカタラーゼ(CAT)があり,非酵素的なものにα-トコフェロール,β-カロチン,フラボノイドなどがある。酸化反応と抗酸化反応のバランスの乱れに起因する酸化的ストレスは,細胞内シグナル伝達系にもさまざまな影響を与える。酸化的ストレスの実験に過酸化水素(H202)をよく用いるが,この物質は細胞膜を容易に透過して中に入り,細胞内の酸化的状態を操作できるからである。ここでは,主に神経細胞モデルのPC12細胞におけるH202刺激による脂質シグナリングをホスホリパーゼD(PLD)を中心に述べる。
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© 2001 公益社団法人 日本油化学会
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