抄録
本総説では, 新しいタイプの糖質両親媒性化合物の合成と物性ならびにそれらを用いてのアミノ酸エステルのエナンチオ選択的加水分解, 糖類の選択的輸送, 金属カチオン認識について紹介する。グルコノー1, 5一ラクトンならびにN-アセチル-D-グルコサミンから, 長鎖アルキルアルデヒド (または長鎖アルキルメチルケトン) ジメチルアセタールとの位置選択的アセタール交換反応を含む数段階を経て, 新規な糖質界面活性剤を合成した。それらのうち, グルコノ-1, 5-ラクトン由来の非イオン界面活性剤とN一アセチルの一グルコサミン由来のアニオン界面活性剤は優れた表面張力低下能を示した。糖アミド基を親水基とする界面活性剤がフェニルアラニンP一ニトロフェニルエステル臭化水素酸塩の加水分解反応においてエナンチオ選択的ミセル触媒作用を示すことを見い出した。その加水分解速度とエナンチオ選択性は糖アミド型界面活性剤の糖鎖構造とアルキル鎖長の影響を受けることがわかった。また, グルコノアミド型両親媒性化合物により形成される逆ミセルが糖類の選択的液膜輸送キャリヤーとして有効に機能し, その輸送選択性が糖分子の疎水性と相関があることを明らかにした。さらに, 各種金属イオン存在下あるいは不在下でのCMCの変化から, 両親媒性シクロイヌロヘキサオースがK+, Rb+, あるいはBa2+と水中で錯形成することがわかった。一方, Li+およびNa+との錯形成はほとんど認められなかった。