オレオサイエンス
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11 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総説論文
  • 大隅 典子
    2011 年11 巻10 号 p. 359-363
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/07/18
    ジャーナル フリー
    脳は乾燥重量の約60%が脂質であり, 中でも, ドコサヘキサエン酸 (DHA) やアラキドン酸 (ARA) などの高度不飽和脂肪酸 (PUFA) が多く含まれている。これらは必須脂肪酸としても知られ, 乳児の脳の発育に重要とされ, また成人においても記憶力や認知症の改善, 統合失調症の症状緩和の効果があるなど, 注目されている。細胞質内ではこれらのPUFAは特異的に脂肪酸結合タンパク質 (Fabp) と結合し, 細胞膜へ輸送されたり遺伝子発現に関わる。本稿では, 神経生物・行動神経科学的な知見から, PUFAおよびFabpが, 脳の発生・発達および, 生後脳での神経新生への寄与について紹介する。
  • 岡田 知雄
    2011 年11 巻10 号 p. 365-371
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/07/18
    ジャーナル フリー
    ヒト胎児・新生児に関する総合的な脂質栄養の成長発達の役割やそのメカニズムについて考察された論文は, わが国では極めて少ない。これには, 1) 母体側因子, 2) 胎盤脂質転送機i構, 3) 胎児側因子, 4) 出生後哺乳内容についてそれぞれ考察しなければならない。近年, 未熟児医療が著しく向上したにもかかわらず, 超低出生体重児の脂質栄養に関する知識の無さには驚かされる。脂質に関するDOHaDの知見をまじえて解説した。
  • 日比野 英彦
    2011 年11 巻10 号 p. 373-379
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/07/18
    ジャーナル フリー
    細胞への脂質の取り込みや排出に関する新しいシステムが生体異物排出機構の解明の過程で見出された。この新しい脂質輸送機構は, 生体異物排出ポンプである多剤耐性遺伝子産物であるABC (ATP結合カセット) 輸送タンパク質であることが遺伝子解析によって判明した。ABC輸送タンパク質はリン脂質やコレステロールなど多様な脂質の細胞への取り込みと排出を行っている。この発見により新生児呼吸窮迫症候群のリン脂質輸送や植物ステロール排出機構がより詳細に理解されてきた。母胎から胎児に供給されるDHAは胎盤と脂肪酸結合タンパク質 (FABP) によってその他の脂肪酸より優先的に輸送される。母胎から胎児へのDHAの脳の取り込みは脳型のFABPに制御され, そのタンパク質 (FABP7) をコードしている遺伝子は脳の発生を制御する転写因子 (Pax6) の標的となっている。成人脳において, 脂質取り込みの主要な役割を果たすLDL受容体が脳血液関門 (BBB) の血管側で確認されず, 現在脳への脂質の取り込み機構はまだ未解明である。
  • 香川 靖雄
    2011 年11 巻10 号 p. 381-389
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/07/18
    ジャーナル フリー
    脂質代謝の人種差の主な原因は一塩基多型 (SNP) の頻度差による。食生活のグローバル化に伴ってモンゴロイドに肥満や2型糖尿病が激増した一因がSNP頻度差である。脂質代謝には主要な脂肪酸が糖質に変換できないという制約があるので脂質エネルギー比率が重要な食事因子となる。さらにn-3系とn-6系の脂肪酸はそれぞれ独立にαリノレン酸とリノール酸からのみ形成されるという制約があるのでn-3/n-6比率が次の重要な食事因子となる。SNPの連鎖不平衡にもとつく全ゲノム関連解析 (GWAS) を用いたHapMap計画によって, ネグロイド, モンゴロイド, コーカソイドの問で異なる人種差の祖先識別マーカーが明らかになった。脂質エネルギー比率の増加は飢餓耐性遺伝子 (βAR, UCP, PPAR等) 多型頻度の多いモンゴロイドで脂質代謝異常/糖尿病を誘発した。n-3/n-6比率の低下は脂肪酸不飽和化酵素遺伝子 (FADS) や脂質由来生理活性物質 (PG, LT, TX, レゾルビン, プロテクチン等) の形成酵素遺伝子の多型を通して循環器疾患等の人種差の原因となっている。
  • 石田 直理雄, 鈴木 孝洋
    2011 年11 巻10 号 p. 391-396
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/07/18
    ジャーナル フリー
    最近の研究から, 時計遺伝子のフィードバックループは睡眠ばかりか, 脂質代謝にも影響を与えることが明らかになってきた。そこでこの総説では, コレステロールや食事がどのように時計遺伝子の作るフィードバックループ (RORE, E-box, D-box, CRE, PPRE等のシスターゲット配列を鑑み) に影響を与えるのかを解説する。さらに時計遺伝子VrilleのホモログE4BP4/NFil3が食事に対する時刻合わせや絶食誘導性ホルモンFGF21の早朝発現に重要であることも述べる。最後に中心的な時計遺伝子Period2 (Per2) の転写翻訳後修飾の最近の進歩について, Mybbplaやβ-TrCP1/FWD1との関係について述べる。
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