2015 年 15 巻 1 号 p. 11-16
触覚を客観的に計測したり,遠隔で提示したり再現したりする触覚技術が進歩しつつある。この技術の実現のためには,触感がどのような物理的メカニズムによって引き起こされるかを明らかにする必要がある。触感は一般に形容詞やオノマトペで表されるが,触った時にどのような物理現象が起こっているのかを感覚的な言葉のみから推測することは難しい。そこで,それぞれの感覚がどのような巨視的な物理現象,さらにはどのような皮膚と材料の間の微視的な相互作用によって引き起こされるのかを明らかにすることで,材料の触感デザインの可能性を見出そうとしている。ここでは繊維製品やスキンケア製品の具体的な触感の物理モデルの基礎的な検討例を取り上げ,触感の物理モデルの基本的な考え方,および材料設計への展開の可能性について述べる。