2016 年 16 巻 11 号 p. 511-518
陸上動物の多くが自由移動生活を営むのに対して,海産動物には多くの固着性の動かない動物がいる。著者らの研究材料の一つであるフジツボ・ホヤ類は,代表的な付着動物である。人間にとっては,しばしば付着生物が害になる。それを予防するための素材や化学物質の研究が盛んに行われている。一方,水中で安定にすばやく接着する性質は,既存の接着剤にはない特徴であり,バイオミメティックな新規接着物質や表面・界面に関係する材料開発の手がかりとなる。本稿では代表的な海産付着動物であるフジツボとホヤを中心に,付着を利用して移動するウニやヒトデも取り上げ,接着機構の研究の現状と将来の応用展開に向けた展望を述べる。