オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
16 巻, 11 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 植木 龍也, 山口 信雄, 紙野 圭
    2016 年 16 巻 11 号 p. 511-518
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    陸上動物の多くが自由移動生活を営むのに対して,海産動物には多くの固着性の動かない動物がいる。著者らの研究材料の一つであるフジツボ・ホヤ類は,代表的な付着動物である。人間にとっては,しばしば付着生物が害になる。それを予防するための素材や化学物質の研究が盛んに行われている。一方,水中で安定にすばやく接着する性質は,既存の接着剤にはない特徴であり,バイオミメティックな新規接着物質や表面・界面に関係する材料開発の手がかりとなる。本稿では代表的な海産付着動物であるフジツボとホヤを中心に,付着を利用して移動するウニやヒトデも取り上げ,接着機構の研究の現状と将来の応用展開に向けた展望を述べる。

  • 金子 大作
    2016 年 16 巻 11 号 p. 519-524
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    接着剤は工業や農業,医療分野などありとあらゆる場面で利用され,それぞれの目的に合った接着剤が開発されている。しかしそのほとんどは石油由来合成物であるため,環境に影響を及ぼし健康被害をもたらす。

    我々は,ムール貝の接着機構を模倣し生物由来材料からバイオ接着剤の開発に成功した。この接着剤は生体親和性の高い新規医療用接着剤としての応用が期待されている。本稿ではバイオ接着剤の合成方法や特性,医療分野への展開について述べる。

  • 藪 浩
    2016 年 16 巻 11 号 p. 525-533
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    ムール貝の接着タンパク中に含まれるカテコール基は多様な材料表面と相互作用することで高い接着性を示す。また,カテコール基はフェノール性水酸基を持つため,無機イオンを還元する還元剤としても働く。近年このユニークな特徴を利用して,多様な材料に接着する高分子材料が開発されている。本稿では,筆者らが合成しているカテコール基含有両親媒性ランダムおよびブロック共重合体の合成と,その接着,表面改質,無機ナノ粒子合成のための還元剤としての応用について紹介する。

総説
  • 藤井 義久, 鳥飼 直也
    2016 年 16 巻 11 号 p. 535-540
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    中性子反射率(NR)法は,平滑な物質界面で生じる中性子の光学的な反射現象を利用して,物質の深さ方向の構造をサブナノメートルの極めて高い分解能で,かつ非破壊で調べられる,物質の界面や薄膜の構造解析に有力な測定手法である。中性子のプローブとしての重要な特長の一つは,同位体の識別能であり,特に高分子,界面活性剤,脂質などのソフトマターを構成する主要な元素の一つである水素の同位体,即ち,軽水素(H)と重水素(D)の間に中性子に対する干渉性散乱長に大きな違いがある。このことを利用して,試料が有するH 原子の一部あるいは全てをD 原子で置き換えること(重水素ラベル)により,その物理的性質を大きく変えることなく試料中に中性子に対するコントラストを付すことができる。また,中性子は物質の透過性が高いことにより,物質内部に深く埋もれた界面を非破壊で調べることができる。 NR法は,液体表面などの自由界面を含む種々の物質界面に適用できるが,ここでは固体基板上に調製された高分子薄膜を中心とする研究例を示すことで,ソフト界面の構造解析におけるNR 法の利点を説明する。

feedback
Top