2016 年 16 巻 12 号 p. 555-561
グリシドール脂肪酸エステル(GE)は,食用油に見出された新たな微量成分であり,体内で既知の危害性成分であるグリシドールに変換される可能性が指摘された。ドイツや日本の食品安全行政機関は,①精度の高い定量分析法の開発,②安全性評価,とくに体内動態,③メカニズム解析と低減化の必要性を示した。本研究では,GEのリスク管理に貢献すべく,これら3つの課題に取り組んだ。その結果,世界に先駆けた直接定量法の開発,ヘモグロビンアダクト法を利用したヒトのGE摂取によるグリシドール暴露量の評価,GE生成の温度依存性と活性白土処理を用いたGE低減法を示すことができた。これらの研究成果は,油脂産業界におけるGEのリスク管理に向けて,有用な知見を提供できるものと期待される。