2018 年 18 巻 5 号 p. 233-240
低栄養性細菌(オリゴトローフ)とは極端に低い炭素源濃度で生育する細菌群を指す。筆者らは様々な自然環境中からオリゴトローフの単離を試みているが,中でも備蓄原油から単離したRhodococcus erythropolis N9T-4株は炭素源,窒素源,および硫黄源を全く含まない無機塩からなる培地で良好な生育を示すという超低栄養性を示す。また,透過型電子顕微鏡観察の結果,低栄養条件下で培養した本菌の細胞内に比較的大きな,綺麗な球形のナノ構造体が形成していることが判明した。このナノ構造体をオリゴボディーと名付け,内容物について解析したところ,無機ポリリン酸を含むことが判明し,オリゴボディーはアシドカルシソームの1 種であることが予想された。本総説では,前半N9T-4株の炭素・窒素代謝について簡単に概説し,後半はオリゴボディーとアシドカルシソームの機能について述べる。