オレオサイエンス
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18 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 田代 陽介
    2018 年 18 巻 5 号 p. 221-225
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    多くの原核細胞は真核細胞と同様に細胞外にナノ構造体を放出することが知られている。タンパク質とリン脂質二重層から構成されるこの構造体はメンブレンベシクル(MV)と呼称される。MVは,遺伝情報やタンパク質を含んでおり,生理活性を有している。近年のMV研究の発展により,MVは遺伝子水平伝播やバクテリアの捕食,細胞間コミュニケーションなど,微生物間相互作用に重要な役割を担っていることが明らかになってきた。しかし,どのような微生物間でMVを介した伝達が行われているのか,不明な点が多い。本総説では,MVが特定のバクテリアに情報を伝達する例を紹介する。また,MVに抗生物質を保持させることで,標的のバクテリアを選択的に殺菌することが可能であった。バクテリア由来のMVは,ドラッグデリバリーシステムなど多岐にわたるバイオテクノロジーツールとして有望であり,本研究はその開発に大きく貢献する知見となり得る。

  • 山本 達也, 野村 暢彦, 豊福 雅典
    2018 年 18 巻 5 号 p. 227-231
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    細菌は数十から数百nmの膜小胞(MV) を細胞外に放出する。MVの機能は多様で,その応用研究も盛んに行われているが,その形成メカニズムは完全には理解されていない。我々は,細胞構造が異なるグラム陰性細菌とグラム陽性細菌の両者で共通のMV形成誘導機構を新たに発見したので紹介する。

  • 吉田 信行
    2018 年 18 巻 5 号 p. 233-240
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    低栄養性細菌(オリゴトローフ)とは極端に低い炭素源濃度で生育する細菌群を指す。筆者らは様々な自然環境中からオリゴトローフの単離を試みているが,中でも備蓄原油から単離したRhodococcus erythropolis N9T-4株は炭素源,窒素源,および硫黄源を全く含まない無機塩からなる培地で良好な生育を示すという超低栄養性を示す。また,透過型電子顕微鏡観察の結果,低栄養条件下で培養した本菌の細胞内に比較的大きな,綺麗な球形のナノ構造体が形成していることが判明した。このナノ構造体をオリゴボディーと名付け,内容物について解析したところ,無機ポリリン酸を含むことが判明し,オリゴボディーはアシドカルシソームの1 種であることが予想された。本総説では,前半N9T-4株の炭素・窒素代謝について簡単に概説し,後半はオリゴボディーとアシドカルシソームの機能について述べる。

  • 小林 滉宜, 粟井 光一郎
    2018 年 18 巻 5 号 p. 241-247
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    チラコイドは光合成原核生物であるシアノバクテリアから植物葉緑体まで保存されているナノ構造体で,共通する膜脂質,タンパク質複合体を持ち,酸素発生型光合成の電子伝達反応の場となっている。これまで,様々な光合成タンパク質複合体の機能が明らかとなっている一方で,チラコイド自体の構築機構についての研究は進んでおらず,詳細は不明のままである。本稿では,チラコイドの構築に関わるタンパク質やチラコイド膜脂質合成酵素などを含む,チラコイドに関する最近の研究をまとめた。

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