2019 年 19 巻 9 号 p. 387-392
保存修復・技法解明・復元等のために油彩画の科学調査は非破壊かつ非接触で行なわれている。赤外線写真・蛍光写真・X線写真・斜光写真・顕微写真などの撮影技術およびX線・反射スペクトルなどの分光分析技術が油彩画の科学調査に用いられている。写真撮影は油彩画の状態や内部構造を観察するために行なわれ,分光分析は油絵具の成分とその分布状態を測定するために行なわれている。これらの科学調査技術は比較的早い段階で確立され実用に至っている。最近では新しい分析法やデータ解析法も開発・検討されている。このため本稿では従来の調査法に触れながら新たに開発・検討された調査法についても概説する。