2021 年 21 巻 12 号 p. 525-529
微生物はポリヒドロキシアルカン酸(PHA)という脂肪族ポリエステルを,炭素貯蔵物質として合成し,細胞内に蓄積する。PHAは,土壌,河川水,海水などの自然環境中で生分解性を示し,糖や植物油を原料として合成できるバイオプラスチックとして使用することができる。最近,PHA生合成研究の過程で生産宿主の微生物からオリゴエステルが分泌される現象が発見された。このオリゴエステルはPHA重合の過程で生じた低分子量体が菌体外に分泌されたものであり,高分子量のPHAとは異なり培養液上清から回収可能な発酵生産物である。筆者らはこのオリゴエステルが,バイオプラスチック合成の新しい構成単位,すなわちマクロモノマーとして活用できるのではないかと考え,その材料化に取り組んできた。 本稿では,微生物産生PHAの一般的な性質と共に,PHA生産から派生したオリゴエステルの分泌生産について解説し,それを利用したポリウレタン材料の合成について紹介する。