オレオサイエンス
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総説
シクロデキストリン型超分子分析試薬
鈴木 陽太橋本 剛早下 隆士
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2023 年 23 巻 7 号 p. 367-375

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抄録

ヘルスケアや生物学的研究への将来的な応用に向けて,低コストかつ煩雑な操作を必要としない分析試薬は強く有望視され,これまで活発に開発されてきた。しかし,従来の分子プローブ(分析試薬の基本構造)の多くは水に不溶であり,さらにその合成には時に高度な操作が要求されるという問題を抱えている。これらの問題に対し,シクロデキストリン(CyD)は解決の糸口として期待できる。CyDは水中においてその疎水性空孔に疎水性化合物を内包し,かつ包接を介して様々な分子認識部位を非共有結合的に導入することができる。筆者らはこれまでに,CyDの空孔を水中における疎水性ナノ反応場として活用することを着想し,この設計をCyD型超分子分析試薬として概念構築した。そこで本稿では,分析試薬の基本構造,及び現状の問題点をまとめ,さらに,CyD型超分子分析試薬の成功例について,主に筆者らの近年の報告を中心に紹介する。特に,蛍光,比色,そして電気化学的な信号を示すCyD型超分子分析試薬をまとめた。本稿で紹介するCyD型超分子分析試薬は,従来の分析試薬では実現できない新奇な分子選択性を創出するため,将来に現在の化学センシング系のデザインを革新するであろうと考えている。

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