2024 年 24 巻 3 号 p. 111-118
自己修復は,外的な損傷を自発的または刺激に応答して,構造および物性を回復する機能である。我々は超分子化学に基づく2種類のネットワーク構造を高分子材料に導入することで,自己修復性を付与することに成功した。可逆性架橋は,くり返し結合・解離が可能なホスト-ゲスト包接錯体で架橋を形成する。材料は切断面で再接着して,元の力学特性を取り戻す自己修復性を示した。可動性架橋は,環状分子の空孔に高分子鎖が貫通したトポロジカル架橋である。変形に伴って架橋点がスライド運動することで,強靭かつ高い物性回復性を示した。 これらの超分子ネットワーク構造は,高分子材料に強靭性・自己修復性を付与し,材料の長寿命化および再利用を可能にすることで,石油由来の高分子材料の使用量削減につながり,資源循環型社会を実現させる。