オレオサイエンス
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24 巻, 3 号
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特集序言
特集総説論文
  • 板橋 裕毅, 矢貝 史樹
    2024 年 24 巻 3 号 p. 93-100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    環状分子が機械的な結合によって拘束されたインターロック化合物の一種であるカテナンは,環の運動性の高さに由来する特異な性質を生み出すナノ材料として注目を集めている。カテナンは,環状分子の前駆体を特異的な非共有結合によって組織化する「鋳型合成法」によって効率的に合成できる。一方で筆者らは環構造そのものが単一分子ではなく,数百の分子からなる集合体からできた「ナノカテナン」の作製を実現し,その鎖構造を原子間力顕微鏡により直接観察することに成功した。ナノカテナンは,環状分子集合体の表面で次の集合体の核形成が促進される二次核形成によって形成が可能になる。本稿では,このナノカテナンの発見の経緯と二次核形成の存在を決定づけた実験,さらにナノリングの内径を狭めることによるナノカテナンの連結数の制御等について紹介する。ナノカテナンの創成は,従来のナノテクノロジーでは困難であったナノスケールとマイクロスケールの間にあるメゾスケール領域での構造制御が可能であることを物語っている。

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  • 井上 健一, 伊藤 剛仁, 清水 禎樹, 伯田 幸也, 寺嶋 和夫
    2024 年 24 巻 3 号 p. 101-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    フレキシブルデバイスの実用化に伴い,柔軟な熱伝導性コンポジットの需要が高まっている。しかし一般的に柔軟性や強靭性といった機械的特性と熱伝導性はトレードオフの関係になるケースが多く,それらの特性を高水準で両立するコンポジットの開発は困難である。本稿ではこの課題を解決するアプローチとして,環動高分子を用いた可動架橋ネットワークとプラズマ表面改質によるフィラー分散を活用したコンポジット開発について概説する。フィラーの均一分散と組み合わせることで強く発揮される可動架橋点の滑車効果は,フィラー周辺での応力集中を緩和することで脆化の抑制が期待でき,両者の組み合わせによって柔軟性と強靭性を両立したコンポジット“タフコンポジット”が開発された。さらにフィラー電界配向による熱伝導パス形成とも組み合わせた,金属材料並みの高熱伝導性とゴム材料並みの柔軟性を持つタフコンポジット開発についても本稿にて紹介する。

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  • 山岡 賢司, 山下 尚輝, 以倉 崚平, 髙島 義徳
    2024 年 24 巻 3 号 p. 111-118
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/06
    ジャーナル フリー

    自己修復は,外的な損傷を自発的または刺激に応答して,構造および物性を回復する機能である。我々は超分子化学に基づく2種類のネットワーク構造を高分子材料に導入することで,自己修復性を付与することに成功した。可逆性架橋は,くり返し結合・解離が可能なホスト-ゲスト包接錯体で架橋を形成する。材料は切断面で再接着して,元の力学特性を取り戻す自己修復性を示した。可動性架橋は,環状分子の空孔に高分子鎖が貫通したトポロジカル架橋である。変形に伴って架橋点がスライド運動することで,強靭かつ高い物性回復性を示した。 これらの超分子ネットワーク構造は,高分子材料に強靭性・自己修復性を付与し,材料の長寿命化および再利用を可能にすることで,石油由来の高分子材料の使用量削減につながり,資源循環型社会を実現させる。

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新基礎講座
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