2024 年 24 巻 5 号 p. 191-195
ナノスケールの固体微粒子を乳化安定剤として使用したピッカリングエマルションは,環境に優しい乳化技術として注目されている。植物細胞壁に含まれる高結晶性のセルロースをナノメートルサイズにサイズダウンしたセルロースナノファイバー(CNF)は,水中油滴型エマルションの天然由来の乳化安定剤として使用できる。現在,CNF原料として広く木材パルプが利用されているが,農業・食品廃棄物由来のCNFは木材由来と同等の品質でCNFが得られるため,廃棄物資源のアップサイクルが可能である。本稿では,農業・食品廃棄物由来CNFで安定化されたピッカリングエマルションの長期安定性評価,および磁気共鳴イメージングを使った緩和・拡散測定による不安定化メカニズムの解明について紹介する。農業・食品廃棄物由来CNFによる持続可能なピッカリングエマルションの開発は,サーキュラーエコノミーの構築に貢献する技術である。