2024 年 24 巻 6 号 p. 261-268
本稿はギネスビールの気泡が模様を作る力学を紹介する。気泡は静止液体中で浮上する。これはアルキメデスの原理で説明する浮力のためである。しかし,コップに注がれたギネスビールを観察すると,気泡が下に動くことが分かる。同時に,気泡が粗密の分布を作る。この不思議な流動は,複数の流体力学的な条件が同時に満たされることで発現する。単一気泡の運動方程式,気泡の重力分離に伴う重力流の不安定,気泡分離の明瞭さを表す指標を紹介し,ギネスビールの泡のみが模様を作る理由,逆説的に言えば,炭酸水などで気泡が模様を作る条件を説明する。