オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
特集総説論文
腸内細菌叢を介したポリフェノールの脂質代謝調節機構
升本 早枝子
著者情報
ジャーナル フリー

2026 年 26 巻 5 号 p. 203-208

詳細
抄録

本稿では,食事由来ポリフェノールによる脂質代謝調節機構について,腸内細菌叢との相互作用および短鎖脂肪酸(SCFAs)産生に着目し,長期動物実験およびヒト介入試験の知見を基に概説した。肥満や脂質異常症,2型糖尿病などの代謝性疾患は,慢性炎症,腸管バリア機能の破綻,腸内細菌叢の変調が複雑に関与する全身性疾患として理解されつつある。従来,ポリフェノールの作用は吸収後の直接作用に基づいて説明されてきたが,プロシアニジン類のような高分子ポリフェノールは生体利用性が低く,その作用機序には未解明な点が多かった。近年,ポリフェノールが腸内細菌叢の構成および機能を変化させ,SCFAs産生菌の増加や代謝ネットワークの活性化を介して,脂質代謝を改善することが明らかとなってきた。さらに,SCFAsは受容体を介して腸管バリア機能の強化や炎症応答の抑制に寄与し,全身の代謝恒常性維持に関与する。加えて,ヒト介入試験では,エンテロタイプに依存した応答性の違いが示されており,ポリフェノールの作用は個人の腸内環境に大きく依存することが明らかとなった。以上より,ポリフェノールの機能は腸内細菌叢を介した間接的作用として再評価されるべきであり,個別化栄養戦略の基盤として重要である。

graphical abstract Fullsize Image
著者関連情報
© 2026 公益社団法人 日本油化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top