オレオサイエンス
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受賞論文
バイオサーファクタントの生産と機能利用に関する研究
北本 大
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2003 年 3 巻 12 号 p. 663-672,642

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抄録
バイオサーファクタント (BS) は, 微生物によって作り出される両親媒性の機能性脂質である。BSは, 優れた界面活性や高い生分解性を示すばかりでなく, 様々な界面で合成界面活性剤とは異なる挙動, 機能を発現する。マンノシルエリスリトールリピッド (MEL) は, 酵母によって大量に生産される糖脂質型のBSである。MELは, 優れた自己集合特性 (表面・界面張力低下能, 巨大ベシクル形成能) を示すばかりでなく, 抗微生物活性や動物細胞に対する分化誘導活性も有している。MELは, 氷粒子に対して優れた凝集抑制効果を示すため, 氷スラリーを利用した冷熱蓄熱システムの高効率化にも有効である。さらに, ヒト抗体に対して高い結合性や結合容量を示すことから, そのアフィニティ分離担体としての利用の可能性もある。最近, MELを組み込んだリボソームが, 腫瘍細胞に対して非常に高い遺伝子導入効率 (リボソーム法としてはこれまでの最高レベル) を示すことが判った。このように糖脂質型BSは, 環境適合性と多機能性を併せ持つため, グリーンテクノロジーばかりでなく, ナノテクや先端医療技術など幅広い産業分野で, その機能利用が期待される。
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© 2003 公益社団法人 日本油化学会
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