オレオサイエンス
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受賞論文
無脊椎動物の複合脂質に関する構造生化学的研究
杉田 陸海
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2003 年 3 巻 12 号 p. 653-661,641

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抄録
複合脂質 (リン脂質および糖脂質) は, 植物をはじめ, 微生物から哺乳動物に至るまで広く生物の細胞表面に分布する化学物質であり, 生命現象の各局面では種々の機能発現に深く関わっている。特に高等生物においては, 発癌メカニズムの解明における細胞表面糖脂質構造の劇的な変貌や, 新型糖脂質による新しい免疫システムの制御が重要視されている。また, 複合脂質の構成成分であるセラミドや長鎖塩基についてもそれらの生理的機能が明らかにされ, 注目を集めている。我々は, 地元の琵琶湖に産する貝類を研究材料の出発点とし, その後, 無脊椎動物, 特に前口動物種について, 動物進化の系統樹に沿って研究対象とする動物種を拡大しながら, それらの動物が含有する複合脂質, 主としてセラミド型脂質 (スフィンゴ脂質) の化学構造の解明に力点を置きながらそれらの体系化を目指して現在に至っている。今までに手掛けた動物種は, 軟体, 節足, 環形, 袋形, 触手, 腔腸, 棘皮および原生動物に及んでいるが, これらより数多くの珍しい複合脂質を単離し, それらの化学構造を決定している。本稿では, 1.複合リン脂質の構造に関する研究, 2.複合糖脂質の構造に関する研究, 3複合脂質の免疫化学的研究, 4.複合脂質の調製および分析方法に関する研究, について筆者らの研究を概説した。
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© 2003 公益社団法人 日本油化学会
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